私の原点①リハビリ難民って知っていますか?

2022年5月20日

平成18年の医療保険と介護保険の同時改定がありました。

ここで起きた社会現象が今回のタイトルになっている「リハビリ難民」です。

難民と聞くと

「よく分からないけど大変そう」

と感じると思います。

この平成18年の医療保険の改定によってものすごく困った人たちがいました。

それはリハビリを必要としている患者さんでした。

私はこの時の出来事が、理学療法士としての安定した職ではなく

整体師として働こうと思ったキッカケの一つになりました。

この時、何が起きたのか?

それを説明する前に

まず、医療保険と介護保険の同時改定からお話します。

①医療保険と介護保険の同時改定とは?

②なぜリハビリ難民が発生したのか?

③私が整体師を目指したキッカケ

①医療保険と介護保険の同時改定とは?

医療保険は

病院に行って保険証を出し、治療を受ける時に使う保険です。

この保険を使う事で自己負担が3割で済みます。

これは2年に1回

どの様な治療を受けられるのか?

どの様な薬をもらえるのか?

それらの料金はいくらになるのか?

など内容が改定されます。

介護保険は

65歳以上(病気によっては40歳以上)で介護が必要な状態になったら

受けられる保険で、3年に1回改定があります。

そして、同時改定というのは、文字通り医療保険と介護保険が

同時に改定されるものです。

同時に改定されるので6年に1回。

そのため、

大きな変更になる事が多いと言われています。

平成18年の改定は、関係する人にとっては非常に

大きなものとなりました。

②なぜリハビリ難民が発生したのか?

病院やクリニックでリハビリが、半年以上続けられなくなったからです。

それまでは、

患者側が「リハビリを受けたい」といった意思があれば医療保険を使って、

リハビリを受ける事ができていました。

平成18年の改定で医療保険を使ってのリハビリに日数制限が設けられました。

最長で180日。

医療保険を使わず全額自費であればリハビリを受けられますが、当時は

「保険を使わないでリハビリをする」という選択肢が、

患者さん側、病院側双方になかったためリハビリを続ける事ができなくなりました。

そこで、

180日以降は、介護保険でのリハビリが受け皿になる事が期待されていました。

しかし、

まだまだ介護保険でリハビリを受けられる施設は不足していました。

介護保険でのリハビリは主に

訪問リハビリと

施設に通うリハビリの

2種類あります。

訪問リハビリは患者さんの自宅に施術者が訪問してリハビリを行うものです。

40~60分間、マンツーマンでリハビリをします。

施設に通うリハビリは、施設の車が送り迎えしてくれ場所によって違いますが

短くて2時間。

長くて8時間施設に滞在し、食事したりお風呂に入ったりする中にリハビリの時間が設けられているものです。

マンツーマンでリハビリができる場合もあれば、ラジオ体操の様に集団でリハビリ体操をしたり、スポーツジムの様に器械でトレーニングするところもあります。

マンツーマンのリハビリがあるところでも実際にリハビリを行っている時間は10分20分です。

そうなると

しっかりとリハビリ時間を確保したい場合は、訪問リハビリがその需要とマッチするのですが、

この時の改定で、

もともと訪問リハビリを行っている施設が少ないのにもかかわらず更に訪問リハビリが

受けにくい状況になりました。

それは、

訪問リハビリに回数制限が設けられたためです。

日数制限は設けられませんでしたが、月に4回リハビリを行っていたら2回に

ある条件をクリアすればこれまで通り4回行うこともできましたが、非常に手間のかかる事でした。

ある条件とは複雑すぎるため、ここでは説明を省かせていただきます。

この訪問リハビリの回数制限によってもリハビリを受けられる機会は減りました。

その結果

多くの人がリハビリを必要としているのにリハビリが受けられない状態となりました。

これが世にいう

「リハビリ難民」

という現象です。

この時、感じた憤りは今でも鮮明に覚えています。

これがキッカケとなって介護保険分野でのリハビリが拡充されていきました。

③私が整体師を目指したキッカケ

時は流れて

「リハビリ難民」という言葉が薄れてきた時に、訪問リハビリをしているとリハビリを受けている人ではなくその家族から相談を受ける事が多くなっていました。

「先生、膝が痛いけど、いい先生知らない?」

「施術を受けているけど、全然よくならない」

病院へ行きレントゲン撮影をして

「骨には異常ない」とシップと飲み薬を処方され

それでも「全然よくならない」

整体に行っても

「ただ全身を揉むだけで全然、良くならない」

などと

形を変え

「難民はまだいるんだ」

という事に気が付きました。

医療保険・介護保険のサービスを受けるためには条件をクリアしなくてはいけません。

簡単に言うと

医療保険では、病気やケガの状態

介護保険は要介護の状態

それ以外は対象から外れます。

相談をしてくださる人は介護が必要な状態ではないので

当時、私が提供していたリハビリは受ける事ができませんでした。

私に相談してくださった方の様に対象から外れた人でも困っている人は山ほどいます。

この山ほどいる人は

まさしく「難民」です。

そしてこの「難民」

医療保険・介護保険制度というある程度、質と安全が担保されたサービスではなく

医師や歯科医による自由診療や整体をはじめとした民間療法に頼らざるを得ない状況になります。

医療保険や介護保険では

・誰(有資格者)が

・いつ

・どこで

・何を

・なぜ

・どの様に

行うかが法律で決まっています。

歯の治療で例えてみると

医療保険を使って銀歯を入れる場合、見た目はあまり良くないですが、ある程度の質と安全性は担保されます。

自由診療:本当の歯と見た目が変わらない白い歯を入れる場合、医療保険は効きませんが歯科医師が治療してくれるので安全性は担保され質は格段に上がります。

一方、

民間療法で歯の治療を受けようとは思いませんよね?

でも、整体の分野では

ちゃんとした資格や知識、技術がない人でも整体師を名乗って施術ができます。

私が医療保険や介護保険分野で理学療法士として働く事より整体の分野に行ったのは、民間療法の整体ではなく、

歯科医師による自由診療の様に医学的根拠に基き安全性が担保され、

より効果的な施術が行えるように

という点からでした

この「リハビリ難民」といった事件がなければ、こういった事に気が付かず、今でも訪問リハビリの仕事を続けていたかもしれません。

その点を考えると

ものすごく憤った事でしたが、私の考え方や生き方を大きく変えてくれたので

私としては、いい出来事だったのかもしれません。

今後も

「こうした方がよい」と

感じるものには積極的に行動を起こしていきたいと思います。