その痛み!何故なかなか治らないの?

2022年4月10日

あなたは痛みが「なかなか治らない」と聞いてどの様な事を思い浮かべますか?

今回は「なかなか治らない痛み」つまり慢性痛についてお話をして、その対処法について説明していきたいと思います。

現在の医学では炎症性の痛みについての知識や治療法は確立されてきていますが、慢性的な痛みについてはまだ知識や治療法は発展途上です。

その証拠に平成31年4月22日名古屋大学のプレスリリースにて

「ストレス下での持続的な筋緊張が慢性的な痛みにつながる仕組みを解明」

というタイトルの論文が発表されました。

内容は「立つ」「座る」その姿勢を維持するために筋肉に過度の緊張が脊髄内の特定の免疫細胞を活性し慢性的な痛みを引き起こしている。という内容です。

そして「慢性的な痛みの患者さんの痛みを和らげる治療法として筋の緊張を和らげる事が有効であるといった可能性が浮かびあがってきた」と書かれてもいます。

筋の緊張を和らげる方法として、マッサージが有名です。

これまでマッサージなどの筋の緊張を和らげるのは

「強い刺激に一時的にさらされると、そのあとの一定の時間痛みや熱さを感じないような反応が出るオフセット鎮痛」による効果だけであまり意味をなさないという意見も存在しています。

この様に慢性痛に関する知識や治療法についてはいまだに確立されたものがないことが現状です。

そこで、理学療法士として長年「慢性的な痛み」と向きあって来たなかで、経験的、知識的に得られたものをお伝えさせていただきます。

痛みの種類

痛みの分類には「急性痛」「慢性痛」。「炎症性」「非炎症性」の痛みがあります。

それぞれの特徴は下の表の通りです。

慢性痛の原因は?

慢性痛は諸説ありますが、ここで紹介するのは3つ

1つ目は筋肉が張って血管などが押しつぶされて痛みが出る。

2つ目はトリガーポイントです。

3つ目は骨と筋肉と皮膚の関係です。

まずは1つ目。

1つ目は筋肉が張って血管などが押しつぶされて痛みが出る。

についてですが、図1を見てください。

筋肉の中には血管や末梢神経があります。

筋肉が張っていると血管や末末梢血管のスペースが狭くなり圧迫されます。

血管が圧迫されると血流が悪くなり、酸素も不足してきます。

酸素が不足すると、細胞は炎症物質を出し、これによって痛みを感じます。

これが慢性の痛みの原因の一つと言われます。

なぜ炎症物質を出すのか?

諸説ありますが、

この炎症物質が血管を拡げる作用があり、防衛反応の一つして考えられています。

また、単純に炎症物質が出てビリビリと感じたら、ビリビリしている所が気になって動かし、動かすと多少でも血流が良くなるからではないか?とも言われています。

2つ目の原因として

トリガーポイント(図2)があります。

トリガーポイントとは、症状を引き起こす引き金(トリガー)となっている場所(ポイント)の事を言います。

シビレや痛みがあると「その痛い部分が悪いのでは?」と普通思いますよね?

そうではなく、シビレや痛みがある部分とは離れた別の場所が痛みの原因になっているのです。

ペインクリニックでもこのトリガーポイントを治療に用いられている先生も多いことと思われます。

このトリガーポイントの形成される過程では一つ目の筋肉の緊張と血流が関わっています。

3つ目は

筋肉と骨の関係、筋肉と皮膚の関係です。

筋肉と骨、皮膚それぞれの組織の間は滑るようになっています。

筋肉が張って、それぞれの組織間の動きが悪くなり癒着したりすると

筋肉を動かそうとした際、骨に癒着した部分が動かず、引っ張られ痛みが出ます。

同様に皮膚と筋肉の間でも癒着があると筋肉が動いた際に、皮膚が引っ張られ痛みが出ます。

慢性的な痛みがある人の中には皮膚がパンパンに張っている人もいます。

あなたはどうですか?

慢性的な痛みがあれば、痛みの出ている場所を見てください。

他のところより皮膚が張っていませんか?

じっとしていると痛みはないが、動くと痛む場合はこの現象が原因になっている可能があります。

この他にもペインクリニックでは、「痛みの記憶」が原因と考えられていることもあります。

簡単に説明すると、痛みを引き起こす原因が無いのに、痛みがある状態を普通の状態として、脳が勘違いした状態で記憶してしまう。というものです。

そのため、神経ブロックなどで痛みを感じない時間を作る事で「痛みがない」状態が正常だと記憶を書き換える治療を行います。

ここでタイトルに戻り

慢性痛がなかなか治らない

についてですが、

一般的にされている治療が、薬を服用したり、湿布を貼ったり、痛み止めの注射をしたり

では、筋肉に対する治療が含まれていません。

この慢性痛を引き起こしている筋肉が炎症を起こしているであれば、

痛みを止めて時間が経てば勝手に良くなります。

しかし、炎症ではなく筋肉が硬くなったり、張ったりして症状が出ている場合は

物理的に筋肉をほぐさなくてはいけません。

そういった治療を行っていないと慢性痛は改善する事は難しくなります。 今回はここまでですが、次回は慢性痛を改善するための治療についてお話していきます。